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亮は首を傾げながら、とりあえず出していた手を引っ込めた。
「あぁ……うん」
(よくわからないけど、何だか大変なことになったんだよね)
作業を続けている祐に焦点を合わせ、気にかけつつ。亮は立ち上がった。
「それじゃあね」
祐は顔も上げず、面倒くさそうに、
「ん」
(明日は、きちんと覚えとけよ。いちいち注意するの、面倒なんだ)
心の中で、彼は盛大に文句を言った。
「いつも、すごいね」
下駄箱から離れた始めた亮は、背後を気にしながら、美鈴に話しかけたが。彼女は何かに気を取られていて、返事を返さなかった。
「…………?」
(……似てる?)
珍しい親友の態度を、亮は不思議に思い、
「どうしたの?」
その声で、美鈴は我に返り、
「……あぁ」
(気の……せい…? 話題変えて、ごまかすか)
何親友に視線を止め、美鈴は全然違うことを言った。
「ねぇ、亮?」
「何?」
「何で、白石は、バンドなんか始めたんだと思う?」
美鈴の突然の問いかけに、亮は一生懸命考え出した。
「…………?」
(今年に入って、急にバンドやるって言い出して。春にデビューしたら、あっという間に、すごい人気者になったんだよね)
さらに、亮は小さい頃のことへダイビング。
(祐は昔から何考えてるのか、よくわからないんだよね。誠矢の家に遊びに行くと、だいたい来てて……よく一緒に遊んだ。
でも、気づくと、いつも祐はいなくなってて……誠矢とふたりきり。何してるのかなって思って探すと、ぼうっと一人で考えてて……。話しかけても集中してるらしくて、返事はしないんだよね。
だから、そのまま放っておいて、誠矢と遊んでるうちに、祐のこと忘れちゃって……。
それで、日が暮れてから、祐のお母さんが迎えに来て、誠矢といつもびっくりするんだよね。まだ帰ってないって、気づくから。
それで、慌てて探すと、同じ場所でまだ考えてるんだよね。いつもそんな感じで、叱られても、全然気にしてるように見えなかった。わかってないのかな? 叱られてるって。
でも、いつもぼうっとしてるわけじゃないんだよね。気づくと、いなくなってる時もあって……。んー、祐って、何考えてるんだろう?)
結局、彼の理由にたどり着けなかった亮は首を傾げた。
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