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亮は手を止め、きょとんとする。
「何味?」
さらにそこへ、ルーの混乱発言が追加。
「木の実さんっ♪」
ルーが持ってきたケーキーーナッツやドライフルーツをふんだんに使った秋らしさを感じさせるチョコレートケーキ。それを受け取ると、裕の右手には板チョコ、左手にはチョコケーキと、なぜかダブルおやつに。彼はそんなことには構わず、亮とルーの会話にため息をつく。
「…………」
(突っ込むの面倒だから、誠矢に譲る。ありがたく思え)
めちゃくちゃになってしまった会話に、さすがの天才少女・美鈴も、ため息。
「…………」
(まったく、あんたたちは………)
親友の意志をしっかり受け継ぎ、誠矢はまず、ボケボケ少女・亮を片づける。
「いやいや、ベタな間違いしてくんなって。飴じゃねぇって」
そして、金髪天使の最初の間違いを、やっと指摘。
「『図太い』じゃなくて、『鋭い』だろ!」
(よし、全部、突っ込んでやったぜ!)
役目を終えた誠矢に、ルーはふんわり天使の笑みをプレゼント。
「そうそう、それ。鋭いさんっ♪」
一段落したところで、珍しく祐の叫び声が。
「うまいっ! やっぱり、これくらい甘くないとな」
誠矢に休む暇を与えず、なぜか笑いを取りにいった祐。さりげない、親友からの前振りに、誠矢は思わず、
「昼飯食い終らねぇうちに、ケーキ食うなって!」
(いやいや、オレ、昼飯食う時間なくなっちまうだろ)
板チョコを右手に残したまま、大口を開けて、祐はチョコレートケーキをパクつきながら、視線だけ誠矢へ向けた。
(じゃあ、放置してやる。ありがたく思え)
誠矢はニヤリとし、焼きそばパンを頬張り始めた。
(おう、サンキュウな。やっと、昼飯食えるーー!!)
そこで、勘の鋭い彼は、何かに気づいた。
(あぁ! お前、何か考えごとしてんだろ?)
祐は不機嫌そうに、別の方向へ顔を向けた。
(考えごとしてるってわかったなら、話しかけるなよ。今、対策練ってるところなんだ)
誠矢はそこで、意味あり気に微笑んだ。
(こないだ、大変だったらしいな。ルーに聞いたぞ)
赤髪少年は、ちらっと校舎の一角を見上げた。
(あいつに、助けてもらったって)
何か、チョコレートに関する事件があったらしい。しかも、ここにいない誰かさんを巻き込んで。
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