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チョコレートケーキを、祐はあっという間に完食。そして、後ろから大きな紙袋を取出し、ガサゴソ始めた。
誠矢はそれを横目でうかがいつつ、
「今日も大漁だな」
祐は返事をするどころか、見向きもせず、ガサゴソ。
「…………」
「いっぱいさん」
ルーにも話しかけられたが、それでも祐は、ガサゴソ。
「…………」
中身を全て取り出した銀髪少年は、手紙とプレゼントにわけ始めた。
(もっと、合理的な方法……。そうだな……あれがこうで、それが……)
そうして、何も言わなくなった祐を置いて、他のみんなはそれぞれ食べ始めた。だが、亮はそのままじっと祐をうかがい、
「……?」
(祐、話しかけても、また上の空だ。何か考えてるのかな?)
ロック界の王子様はなぜか、手紙を数え始めた。
(一、二、三……)
不思議に思い、亮は、
「祐、数えてどうするの?」
彼女を無視して、祐は作業を続ける。
「…………」
(数えてるって知ってるなら、話しかけるなよ。間違えるだろう。十、十一、十二……)
さすがに親友だけあって、何をしているのか理解している誠矢は、ニヤニヤしつつ、
(お前、マジで抜かりねぇな)
おかかおにぎりを頬張りながら、美鈴は妙に感心。
(まめだよね、そういうことろは。大抵のことは面倒くさがって、やらないのに……)
全部数え終えた祐は、手紙をじっと見据え、ぼそっと。
「これ……一通、どれくらいだろうな?」
幼なじみのつぶやきを聞いた亮は、なぜか空を見上げ。夏の眩しい日差しに目を細めた。
「え……?」
きょとんとした亮の右隣から、祐の独り言が。
「一通、十円?……いや、百円。……ちょっと高いか…?」
ロック界の王子様は、あらぬことに、ファンから手数料を徴収しようとしていた。誠矢がゲラゲラ笑いながら、
「だから、そういう言い方すんなって!」
(金の亡者だって、誤解されんぞ!)
親友の突っ込みにはお構いなしに、祐はプレゼントを取り上げ、
「こっちは、現金だったらいいのにな」
(物だと非合理的。 別の方法があるかも知れない……。そうだな……あれがこうで、それがああ……)
さらに画策し始めた祐に、ルーはふんわり笑顔を送る。
「祐クンは、すごいさん」
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