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金髪天使の言葉で、亮はやっと祐が何をしているのか気づいた。ぼんやりプレゼントを見つめている、銀髪の幼なじみに焦点を合わせて、
「…………」
(祐は、お金が欲しいから、バンドを始めたのかな?)
その視線に気づいた美鈴が、
「彼の理由は、そんなに単純じゃないよ」
「え……?」
(複雑な理由があるってこと?)
ぽかんとした亮の瞳を、誠矢はちらっとうかがい。
(祐には壮大な計画があんだよ)
そして、親友に視線を送り、心の中だけで軽く突っ込み。
(お前、絶対、高校生じゃねぇだろ。どっかの皇帝みてぇじゃねぇか、その計画)
首を傾げている亮を、ルーは優しく見つめ、
「ふふふっ……」
(亮ちゃんも、わかるさんなの、いつか)
ついで、ふんわり天使はみんなを見渡し、
(ボクがいなくても、大丈夫さ?ん♪ だから、ボクはお仕事さん)
お弁当を片づけ、ルーは立ち上がる。
「ボク、光先生に届けるって、約束さん」
ケーキの入った箱を抱え、金髪を夏風になびかせながら、可愛く手を振った。
「五時間さんまで、バイバイさんっ!」
スキップで中庭を去ってゆくルーの背中を見送りつつ、誠矢は美鈴に、
「八神も食うのか?」
(ルー、毎回、新作持っていくけどよ)
「彼、ルーのお店のファンらしいよ」
その時だった。『天災は、忘れた頃にやって来る』ーーという言葉があるように、平和なランチタイムに、亮の意味不明な発言が突如襲った。
「ルーもファンレター届けに行くんだね」
なぜか、話がごちゃまぜになった親友に、美鈴はおでこを押さえ、
「あんた……本当にちゃんと話通じないね」
焼きそばパンをかじろうとしていた誠矢は、手を止め、ゲラゲラ笑い出した。
「いやいや、勝手にくっつけんなって! 裕の話と」
「え……? 先生が、ルーのファン?」
フライドポテトを持ったまま、ぽかんとした亮ーー宇宙一の天然ボケを前にして、さっきまで一言も話さなかった祐が、ぼそっと締めくくった。
「お前くらい、何も考えずに生きてみたい……」
さわやかな風が四人の間を吹き抜け、午後の授業開始の予鈴が鳴り始めた。
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