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そんな八神にじっと見つめられ、いつも通り戸惑い始めた亮は、
「あ、あっ……あの……!」
八神はあごに手を当て、さらにじーっとサボっている生徒を見つめた。
「何をしていたんですか?」
亮はますますドキドキし、思わず!
「かっ、考えてもわからない時は、どっ、どうしたらいいですか?」
質問された担任教師ーー八神はポーカーフェイスで、
「そうですね……?」
なぜか、そのままの姿勢で考え始めた八神に、さっきからずっと見つめられっぱなしの亮は、餌を求める鯉のごとく、口をパカパカさせた。
(先生、叱りに来たんじゃないんですか?)
(ですから、こうしているんですよ)
八神は独特な叱り方をする教師だった。十分間を置いた彼は、あごに当てていた手を解き、
「あなたの質問はとても興味深いですね。今後の参考にさせていただきましょう」
言い残し、さっと教壇の方へ歩き出した。八神の呪縛から解かれ、緊張の糸が切れた亮は、床に崩れ落ちてゆく。
(す、すみません。考えごとなんかしてて……)
左隣の美鈴が、タイミングよく亮の椅子を元に戻し、親友をしっかり救出。
(あんた、本当、彼に弱いよね)
すとんと椅子に落ちた、亮はヘトヘトで、
「あ……ありが……とう」
右隣の祐は、我関せずで、
「…………」
(昼休みの言葉、取り消し。何も考えずに生きてると、問題起こして面倒くさい)
亮の前の席に座っている誠矢は、笑っているらしく、肩が小刻みに揺れている。
「………っ!」
(お前、毎回驚きすぎだって! 今日も、思いっきり八神のワナにはまってんじゃねぇか)
ふと、視界の端に親友ーー祐の姿が入り、誠矢は何か引っ掛かりを覚えた。
(あぁ……? あれって……)
誠矢の右隣の席で、ルーは純粋無垢な微笑みを浮かべていた。
(仲良しさんで、大切さ~ん♪ ふふふっ)
結局、亮は夢の謎を解くことが出来ないまま、放課後を迎えた。
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