夢の謎

2/2
前へ
/382ページ
次へ
 そんな八神にじっと見つめられ、いつも通り戸惑い始めた亮は、 「あ、あっ……あの……!」  八神はあごに手を当て、さらにじーっとサボっている生徒を見つめた。 「何をしていたんですか?」  亮はますますドキドキし、思わず! 「かっ、考えてもわからない時は、どっ、どうしたらいいですか?」  質問された担任教師ーー八神はポーカーフェイスで、 「そうですね……?」  なぜか、そのままの姿勢で考え始めた八神に、さっきからずっと見つめられっぱなしの亮は、餌を求める鯉のごとく、口をパカパカさせた。 (先生、叱りに来たんじゃないんですか?) (ですから、こうしているんですよ)  八神は独特な叱り方をする教師だった。十分間を置いた彼は、あごに当てていた手を解き、 「あなたの質問はとても興味深いですね。今後の参考にさせていただきましょう」  言い残し、さっと教壇の方へ歩き出した。八神の呪縛から解かれ、緊張の糸が切れた亮は、床に崩れ落ちてゆく。 (す、すみません。考えごとなんかしてて……)  左隣の美鈴が、タイミングよく亮の椅子を元に戻し、親友をしっかり救出。 (あんた、本当、彼に弱いよね)  すとんと椅子に落ちた、亮はヘトヘトで、 「あ……ありが……とう」  右隣の祐は、我関せずで、 「…………」 (昼休みの言葉、取り消し。何も考えずに生きてると、問題起こして面倒くさい)  亮の前の席に座っている誠矢は、笑っているらしく、肩が小刻みに揺れている。 「………っ!」 (お前、毎回驚きすぎだって! 今日も、思いっきり八神のワナにはまってんじゃねぇか)  ふと、視界の端に親友ーー祐の姿が入り、誠矢は何か引っ掛かりを覚えた。 (あぁ……? あれって……)  誠矢の右隣の席で、ルーは純粋無垢な微笑みを浮かべていた。 (仲良しさんで、大切さ~ん♪ ふふふっ)  結局、亮は夢の謎を解くことが出来ないまま、放課後を迎えた。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加