十七歳の誕生日

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 ーー神月家のリビング。  さわやかな朝日が差し込み、おいしそうな匂いが広がる。 「おはようっ!」  食卓へ現れた亮に、元気よく挨拶をしたのは、三つ年上ーー二十歳の亮の姉、神月 愛理(あいり)。髪の色は妹と同じ茶色だが、長さは背中の半分ぐらいまであり、ふんわりと癖がついている。  今は一緒に暮らしていない両親の代わりに、亮の保護者として、色々と面倒を見ている。そんなしっかり者の姉だが、美青年にはめっぽう弱い。八歳年上のフィアンセがいて、彼とは大学卒業と同時に結婚する予定。  彼女を一言で表すと、『きゃぴきゃぴ』という言葉がよく似合う。 「おはよう、お姉ちゃん」  朝食の用意を終えようとしている姉に元気よく挨拶をしながら、亮は自分の席へ座った。目の前にたくさん並んでいる料理の匂いをかぎ、目をキラキラ。 (うわ、おいしそうだな。いっぱい食べよう!)  冷たいミルクで満たされたグラスをテーブルに置き、愛理は妹の正面に腰掛ける。 「さぁ、食べましょう」 「いっただっきまーす!」  ふたりそろってそう言うと、それぞれ好きなものに手を伸ばし、さっそく食べ始めた。  トーストにハチミツを塗りながら、愛理が、 「あ、そうそう。今日、六時に正貴(まさたか)さんも来るって」  ベーコンを運ぶ手を止め、亮は急に大声を上げる。 「えっ、本当に!? 嬉しいなぁ」  その人の癖を思い浮かべた彼女は、すぐに心配そうな顔なり、 「でも、大丈夫かな? よく時間、忘れちゃうみたいだから」  妹の心配ごとに、姉は意味あり気に微笑み、 「確かに、時間は忘れるわね。でも、そこがまたいいところなのよ」  さらっとのろけてみせて、正貴の口ぶりを真似る。 「『亮ちゃんのためなら、がんばって覚えておきます』って言ってたわよ」 「やっぱり優しいね、櫻井さんは」 「それは私の愛する人ですもの、当然よ」  自信たっぷりに答えた、いつも通りの姉に、妹は幸せな気持ちで一杯になる。 「遅れないように帰ってくるね」 「腕によりをかけて、料理しちゃうわよ」  ガッツポーズした愛理に、亮は笑顔で、 「うんっ、楽しみにしてる」  そしてまた、それぞれ食事を再開。
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