めぐりあう運命

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 そして、彼はわざと間接的な突っ込み。 「いやいや、最初の二文字しか合ってねぇだろ」 (また、聞き間違えろよ)  赤髪美少年の思惑通り、意味不明な相づちを打つ亮。 「あぁ、ちょっとピリッとするんだね」 (山椒が入ってるんだ。初めてだよ、そんなケーキ食べるの)  再び、従姉妹の心を感じ取った誠矢は、 「いやいや、それは入ってねぇって」 (ほら、次も聞き間違えろよ)  また従兄弟の計画通り、亮はなぜか箱を耳の側で振り始めた。 「え……?」 (でも、音がするよ)  耐えられなくなった誠矢は、ゲラゲラ笑い出した。 「いやいや、プレゼントは入ってるって!」  亮は何をどう解釈したのか、 「あぁ、カボチャのやつ、おいしいよね」  明後日の方向へ返してきた彼女に、誠矢は心の中で、 (『プレゼント』を『プリン』に聞き間違ってんぞ)  密かに突っ込むと、ふたりは学校の敷地内へ入った。バイク置き場へ行くため、誠矢は亮に軽く手を挙げる。 「とにかく、おめでとうな。じゃ、あとでな」 「あぁ、うん」 (帰ったら、さっそく食べよう、山椒入り豆腐プリン)  思いっきり勘違いしたまま、亮は誠矢と別の方向へ歩き出した。  昇降口へ入ろうとすると、後ろから声をかけられた。 「亮、おはよう」  亮が振り返ると、そこにはーーモデルが出来そうなほどの背と抜群のスタイルをした、少女が立っていた。黒に限りなく近い赤い髪を、夏の風に揺らめかせながら、近づいてきた彼女に亮は、 「おはよう、美鈴!」  元気にそう言うと、大人っぽい瞳で少しだけ微笑んで見せた。彼女の名は、春日(かすが)  美鈴。亮と同じ十六歳の高校に年生。子供っぽい亮に比べて、美鈴は落ち着いたところがあり、大抵のことでは動じない。  三歳の時に、娘の才能に気づいた彼女の両親は、彼女を連れて、一路アメリカへ飛んだ。あっという間に飛び級し、十歳で大学を卒業。その後、十三歳で国の研究機関にスカウトされ、研究員として現在は働いている。大人たちの中で育ってきたため、時々、高校生とは思えない発言をする。  彼女を一言で表すなら、『天才少女』という言葉がぴったりくる。なぜなら、SNAという魂のDNAみたいなものを発見したIQ二百の頭脳の持ち主だからだ。今はわけあって、日本で高校生活を送っている。
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