そんなものは飾りにもならない

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そんなものは飾りにもならない

「おお、絶景じゃん」  遠くにそびえる富士山を眺めながら、先頭の須藤(すどう)が溜め息を吐いた。それに続けて井坂(いさか)持田(もちだ)も感想を口にする。  その後ろで、進藤(しんどう)はただ一つ息を吐いただけだった。確かに絶景、と感じることはいくつもあったが、言葉がうまく出てこなかった。  そのことを前の三人は誰も気にせず、感想を言い合いながら露天風呂へと入っていく。  頃は二月の中旬。大学の軟式野球部に所属していた進藤たち四人は、日帰りで山梨のとある温泉を訪れていた。彼らにとって、これが部としての卒業旅行である。それぞれに卒論やゼミの卒業旅行があり、時間をとることができなかったのだ。  高速道路を使って片道約二時間。目的の温泉施設に着いたのが正午を少し回ったところで、昼食をとってからこうして四人で温泉に浸かっている。     
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