そんなものは飾りにもならない

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 発案者で自称温泉好きの須藤が決めた場所だけあって、充実した施設だった。室内には普通の温泉に加え、泡が出たり滝のようになっている浴槽があり、そのどれもがなかなかに広い。そんな浴槽が五つほどあるメインの部屋から通路が伸びていて、その途中にも五、六人が入るくらいのちいさな浴槽が三つ、そしてサウナも三つある。通路の突き当りのドアを開けると、今進藤たちがいる露天風呂が広がっていて、浴槽が3つに分かれ、どれも一〇人程度は余裕を持って入れる大きさだ。  進藤はわいわいと話す三人の会話を聞き流しながら、ぼんやりと景色を眺めて相づちを打っていた。でてくる話は就活がどうだった、卒論がどうだった、あるいは趣味に彼女に最近の出来事と取り留めのないものばかりだ。さすがに話を振られればそれなりに答えはしたが、興味のない話ばかりで自分が何を答えたかすらもすぐに忘れてしまっていた。 「いやあ、やっぱり温泉っていいよなぁ。すげえ疲れがとれる感じ」 「ほんとにな。アパートの風呂はそもそもお湯たまにしか張らないし、入ったって足伸ばせないもんな」 「ここは景色も開放感も抜群だしな!」 「だなー」  広々とした温泉。眺めのいい景色。確かに普段のアパート暮らしでは絶対に体験できないことである。他三人の意見に進藤も首を縦に振りながら、伸ばした足をふらふらと動かした。     
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