そんなものは飾りにもならない

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 温泉とサウナを何往復もして三時間ほどすごし、四時過ぎに温泉施設を後にした。帰りは若干の渋滞に巻き込まれつつも七時過ぎにレンタカーを返し、そのまま駅の近くの居酒屋へと入った。ここからは四人だけではもったいないと部の後輩に連絡を入れ、連絡のついたメンバーが途中から参加。お開きとなった一一時には結局合計一〇人となっていた。  電車やタクシーを使って帰る面々とは別に、進藤は一人徒歩でアパートへと向かった。進藤だけタクシーを使っているメンバーと家の方向が違うので、いつもそうなのである。  あと四半刻もすれば日付が変わる頃、進藤はアパートの自室に着いた。正直なところくたくたである。もうさっさと布団にもぐりこんで寝たい。明日の予定は昼からしか入っていないので、一〇時頃まで起きたくない。  そう思うけれど、その気持ちをぐっと我慢して、進藤は風呂とトイレにつながるドアを開けた。今日入ってきたのと比べてしまえば、あまりにも狭い浴槽に栓をしてお湯を出す。一度浴室から出て部屋の電気と暖房をつけ、バッグの中に残っていた麦茶のペットボトルをちびちびと飲む。五分も経たないうちに、浴槽にはちょうどいいだけのお湯が張られた。  はやる気持ちを押さえて服を脱ぐ。  そして浴槽につかると、進藤は今日一番の盛大な溜め息を吐いた。 「ふうううぅぅぅぁぁああああーーーーーー」  肩までつかることもできず、窮屈に足を折り曲げなければならない浴槽である。進藤は目を閉じ、浴槽の縁に首を預けた。穏やかな心の中で、「最高」という言葉がぐるぐると踊っている。     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加