【蒸熱】柔らかに芽生えた出会い

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中山くんが焦ってお客様を落ち着かせようとしている。店にいる他のお客様も何事かと様子を伺っていた。トラブルだと瞬時に理解した私は深呼吸して間に入った。 「どうかされましたか?」 3人が一斉に私を見て、男性が私に唾を飛ばす勢いで訴えてきた。 話を聞くと、パンを買いに来た男性が入り口の横に置かれた専用のトレーとトングを使わずに直接手でパンを掴んでしまったことに相沢さんが注意したのが口論の始まりらしい。それは私でも注意するだろうけど、相沢さんの欠点は言い方がきつい。神経を逆なでする口調にお客様が逆上したのだ。 「申し訳ありませんでした」 私は何度も男性に謝り、「相沢さん」ときつく嗜めると相沢さんも渋々男性に謝罪した。 場を治めて男性が帰ると相沢さんは涙を流し始めた。 「まったく……」 客席から見えないところでしゃがんで泣く相沢さんには酷だろうが私は怒った。 「お客様にキレてどうすんの」 「す……みませんでした……」 「泣いて後悔するくらいなら初めからまともな対応をしなくちゃ」 攻撃的な一面があるのが相沢さんの短所だ。本人も自覚していても治せないところはまだ子供だと思ってしまう。 中山くんも私が対応したことにほっとしたのか、叱られる相沢さんをフォローすることもなく閉店準備を始めた。 「もう……やっちゃったことは仕方がないから、店長に報告するよ」 営業を2人に任せて店長に報告の電話を入れた。相沢さんは先日クレームがきたばかりで今日このトラブルではきついお叱りが店長からもあるに違いない。 「じゃあ私は帰るね」 「本当にすみませんでした……」
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