最終話 しあわせ

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24歳の秋。 だいぶ一人暮らしにも慣れてきた。 夜ご飯を食べながらテレビを観ていると、尚子が出演していた。 ここ1年くらいで尚子は瞬く間に有名人になった。 テレビは名曲カバー特番で、過去の名曲を様々な歌手がカバーするという企画らしい。 『いつも一緒にいーたかった〜隣で笑ってたかった〜』 尚子は女性グループの名曲をカバーしていた。 やっぱ尚子は歌上手いなぁ…。 『Naokoさんでしたー!ありがとうございました!』 音楽番組では定番の大物司会者と並んで映る尚子。 『今回この曲をカバーされましたが何か思い入れなどありますか?』 『前から好きな曲で、季節の変わり目にはどうしても口ずさんでしまいますね。』 『それは、どなたかそう思う相手がいらっしゃるということですか?』 『い、いやっ、そういうことではなくてっ』 慌てた様子の尚子に司会者が突っ込み会場は笑いに包まれた。 …これは、みんなファンになっちゃうわ…。 私は一人机に突っ伏し悶えながら、 私のことを少しでも思い浮かべてほしいと願わずにはいられなかった。
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