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24歳、春。
この街に来てもう1年。あっという間だった。
そして出版した本の重版が決まった。
ヒマワリ出版社は本当に小さな出版社で、ここからのデビュー作での重版は極めて異例らしい。
「若葉さん!やりましたね!」
「うん。ありがとね、こはるが色々助けてくれたお陰だよ。」
こはるとは、担当者である田口さんのこと。
歳も近い私たちはいつの間にか仕事上の関係ではなく、気心の知れた仲間みたいな存在になっていた。
故郷を離れて独りで過ごしてきた身としては、こういった存在ができて少しほっとしている。
「若葉さん、祝勝会しましょう!今日は特別に奢りますよっ」
「え~こはるに付き合うと長いからな~」
あまり気が進まない私を完全に無視して、こはるは繁華街へ突っ走る。
「若葉さん!早く~」
先に行ってしまった彼女が振り返り私を呼ぶ。
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