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尚子はしばらく考えてから、私の方を見て聞いた。
「ナツさんは、この本を書かれる上で1番伝えたいこととか、大事にされていることはありますか?」
尚子と目が合った。
いや、そう感じてるのは私だけ。
尚子から私の顔は見えないのだから。
私は震える指でスマホに文字を入力する。
【女性同士の恋愛ですが、他の恋愛と違うことはありません。ただただまっすぐな恋の話です。性別関係なく、人を好きになるということは素晴らしいです。嬉しい、苦しい、楽しい、悲しい、幸せ。それら全てを含めて相手を好きになるって凄いことだなと思います。あと、人を信じることができる幸せについても、この話から伝わってほしい、私が大事にしているところです。】
打ち込んだ文章をこはるに読んでもらった。
「……とっても共感できます。ナツさんて素敵な方ですね。」
尚子は少し涙目になりながら、私に微笑んだ。
その涙は、何の涙…?
私は、目の前にいる尚子を抱きしめたい気持ちを必死で抑えていた。
「お話聞けてよかったです。あとは本を読ませて頂いて、曲作りに入りたいと思います。ありがとうございました。」
こうして、尚子との再会の時間が終わった。
この後にあった雑誌の取材は何を聞かれたかも覚えていない。
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