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「高梨さんの笑顔、レア」
「レアって。……私だって、おかしければ笑うし、イラつけば怒るし、悲しければ泣くし」
「うん、そうだよね。なら、教室でもそんな顔見せてくれたらいいのに」
今更それは無理だ。それに、私は元々感情表現に乏しいのだ。
思い切り感情をあらわにする人達を羨ましく思うこともある。でも、自分がそうすることについては抵抗がある。どうしても恥ずかしいと思ってしまう。
そう言うと、鷹藤君はあっさりと「そっかぁ」と引き下がった。
意外に思っていると、またクイと腕を引かれて囁かれた。
「じゃ、オレの前ではいっぱい声を聞かせて。高梨さんがどういう気持ちでいるのか、知りたい」
思い切り後ずさりしそうになる。
さっきの子犬のような可愛らしさはすっかり鳴りを潜め、小悪魔のような艶っぽさに息を呑んだ。
「え、やだ」
「即答! じゃ、こっち」
「ちょっ、待って!」
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