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「れ、蓮もそうして!」
「りょーかいっ!」
敬礼のポーズを取りながら鷹藤君が破顔する。まるで左右に激しく揺れるしっぽが見えるようだ。
こういうところを見せられてしまうと弱い。ワンコやニャンコには途轍もなく弱いのだ、私は。
「じゃ、今日のところはこれで戻るけど、これからもオレの捜索担当よろしく! 杏!」
「あのね! まずそれを直して! フラッとどっかに行くのやめて!」
「えー無理」
なんでよ!? そう文句を言うと、鷹藤君は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、また耳元で囁いた。
「最初は写真撮るためだったけど、最近はもう、杏がオレを探してくれるのが嬉しくて抜け出してたから」
「……」
無邪気な笑顔の裏に、確信犯の笑みが見え隠れする。
どうしてこうなったのかわからないけれど、でも。
私はもう、鷹藤君の罠に嵌ってしまったのかもしれない──そう思った。
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