夜桜シンデレラ

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夜桜シンデレラ

【夜桜シンデレラ】 「……はぁ」  私が遠慮ぎみに玄関扉をあけると、やっぱりリビングの灯りがついていて、ほんのりとオレンジ色の光がドアの隙間から漏れていた。  そして、リビングの扉を開けると、椅子に座ってパソコンを触っている(なお)の姿があった。 「あっ、おかえり春香(はるか)さん」  少しずれている眼鏡を人差し指で整えてから、(なお)は少しだけにこっと微笑んだ。 「今日も遅かったね。お疲れさま」  私に話しかけながら、(なお)はノートパソコンを閉じて立ち上がろうとする。  彼が次にする行動を読み取って、声で制する。 「いいよ、私が勝手にやってるから。(なお)は気にしないで」  そういって、私は乱暴に羽織っていたカーディガンを脱いだ。 「いや、春香(はるか)さんは疲れてるんだから僕がやるよ」  普段はおどおどして優柔不断なくせに、こういうことだけ押しが強い。  そして、いつも通り私は(なお)が用意してくれたパジャマに着替えてお風呂場に向かうことになる。  服を脱いでも、私の身体になにかが引っ付いているように、身体が重く感じる。  熱いシャワーを浴びると少しだけ疲れがとれたような気がするけれど、私のモヤモヤとした気持ちを洗い流すことはなかった     
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