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そうやって、自分を偽って、付き合っていたのだ。
いつまで? 彼が死ぬときまで。いや、死んでからもなおだ。数人しか参列しなかった葬儀にも出た。それからも彼の名誉を傷付けるようなことは一度もしたことがない。私は常に彼の立場を守り続けてきたのだ。
「どこか、無理をしていませんでしたか?」
マルクス博士はそんな私に、別の機会にそう問うた。
ここで、白状すべきか? 彼を実は憎んでいたことを。
しかし、そんなことを言えば、私の今までの苦労が、水の泡になりはしないか?
実は彼を憎んでいた、と言えば、やっぱり彼を殺したのはおまえだろう? ということになりはしないか?
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