混浴露天風呂から

4/11
前へ
/11ページ
次へ
「ねえ、結愛は都市伝説って知ってる?」  それに、頷く娘。 「じゃあ、混浴って知ってる」  また頷く。  両方知ってるとは話が早い。 「パパとママが大学二年生で、まだお互いを知らなかった時の話ね。  パパは夏休みに入ったある日、友達から温泉に行こうと誘われたんだ。一泊二日で。  で、友達がその温泉の旅館まで探して来たんだけど、何とその旅館には露天風呂があったんだ。  しかもその露天風呂から見える景色が凄く良くて。遠くには海が見えると言うおまけつきでさ。  どう?結愛も行ってみたいと思うでしょ」  「うん」  頷く娘。   「もちろんパパもそれには凄く魅力を感じたんだ。感じたんだけど、ただね、そこの露天風呂にパパ的には、ちょっと問題があったんだ」 「なにが?」 「実はさ、その露天風呂がさ、混浴だったんだよ。  それを聞いて、パパはちょっと乗り気じゃなくなったんだ」 「えっ?なんで、混浴なのに?」  おー、ちょっと言ってくれるね~。小学三年生、結構恐るべし。  ちょっと娘に驚いてしまう。 「だって、恥ずかしいでしょ」 「男なのに恥ずかしいの?」 「そりゃそうだよ。目のやり場とか、諸々にさあ」  そう言ってから、ああ、しまった「諸々」なんて言わなきゃよかった。  そこを突っ込まれたらどうしよう。  私がそう思っていると、娘はニタっと笑って 「続けて」  と言う。  あれ、全て理解済みなのだろうか?  ちょっと聞いてみたいところだが、そんな勇気が私に有るはずも無い。  躊躇いなく湯船に一緒に入って来る割には、思った以上に成長していたことに驚いてしまう。  もしかすると、これで一緒に入れるのも最後なのだろうか?  そんな気がしてならなくなって来た。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加