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「ねえ、結愛は都市伝説って知ってる?」
それに、頷く娘。
「じゃあ、混浴って知ってる」
また頷く。
両方知ってるとは話が早い。
「パパとママが大学二年生で、まだお互いを知らなかった時の話ね。
パパは夏休みに入ったある日、友達から温泉に行こうと誘われたんだ。一泊二日で。
で、友達がその温泉の旅館まで探して来たんだけど、何とその旅館には露天風呂があったんだ。
しかもその露天風呂から見える景色が凄く良くて。遠くには海が見えると言うおまけつきでさ。
どう?結愛も行ってみたいと思うでしょ」
「うん」
頷く娘。
「もちろんパパもそれには凄く魅力を感じたんだ。感じたんだけど、ただね、そこの露天風呂にパパ的には、ちょっと問題があったんだ」
「なにが?」
「実はさ、その露天風呂がさ、混浴だったんだよ。
それを聞いて、パパはちょっと乗り気じゃなくなったんだ」
「えっ?なんで、混浴なのに?」
おー、ちょっと言ってくれるね~。小学三年生、結構恐るべし。
ちょっと娘に驚いてしまう。
「だって、恥ずかしいでしょ」
「男なのに恥ずかしいの?」
「そりゃそうだよ。目のやり場とか、諸々にさあ」
そう言ってから、ああ、しまった「諸々」なんて言わなきゃよかった。
そこを突っ込まれたらどうしよう。
私がそう思っていると、娘はニタっと笑って
「続けて」
と言う。
あれ、全て理解済みなのだろうか?
ちょっと聞いてみたいところだが、そんな勇気が私に有るはずも無い。
躊躇いなく湯船に一緒に入って来る割には、思った以上に成長していたことに驚いてしまう。
もしかすると、これで一緒に入れるのも最後なのだろうか?
そんな気がしてならなくなって来た。
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