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ひとりで落ち込んでいると、
「菜美ちゃん。そのお茶、自分で作ったの?」
誰かに後ろから声をかけられた。
「えっ」
振り返ると、なんとたっくん先輩だった。
こんなに間近でみるのは初めてで。
遠目でみるより整った顔と、優しい瞳が私を見つめていて。
昨日までの私なら、叫んでいたと思う。
昨日までの私なら。
「あ、そ、そうですけど……」
「良ければ飲んでもいい?」
「え?えっと…」
「最近ペットボトルばっか飲んでんだけどさ、家でつくったお茶って美味しいよね」
たっくん先輩は返事を待たずに、私の手から水筒をとって、ゴクゴクと飲み始めた。
「あ…あ…」
「ぷはぁ~っ!うまいっ。ありがとう、菜美ちゃん」
なんの悪気もなさそうなたっくん先輩に、文句も言えない。
「いえ……」
水筒を受け取ろうとすると、
「あれ?」
たっくん先輩の左手が、私の右手をとって、上に持ち上げた。
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