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「あっあの、そ……」
「俺の話を聞いてもらってもいい?」
慌てながら「そろそろ帰ろう」と続けようとした祐一郎の言葉を圭介が遮る。
「う……うん」
途中で口を噤んでしまった祐一郎は、帰るとは言えずに圭介の言葉を待った。
「俺さ……」
川面を見ながら、言葉に詰まる圭介が珍しくて、祐一郎はその横顔を見上げた。祐一郎の視線を感じたのか、少しの間をおいて、圭介もこちらを向く。真剣な表情だった。
「祐子ちゃんが好きだ」
「え……」
少し硬い、照れたような困ったような笑顔の圭介に、祐一郎は自分が今どんな表情でいればいいのかわからない。脈がどんどん速くなり、体が熱くなってくる。
「すっ、好きって、どういう意味……?」
かろうじて出た声は少し上ずってしまった。
――友達としてだと言ってくれ。そうでないと……。
「バレバレだと思ってたんだけどな」
照れくさそうに、頭を掻く圭介に、祐一郎は口が開いたまま止まっていた。驚いた顔で見上げる祐一郎の顔を、圭介が見下ろす。もうそこに照れた様子はなかった。
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