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「俺と、付き合ってください」
真っ直ぐに向けられる視線から、目が離せない。何か答えなければ、そう思っているのに頭が働かない。ぽかんと開いたままの口が動かない。
「びっくりさせて、ごめん。答えは、急がないから……」
動揺する祐一郎を、焦らせないように、落ち着かせるようにと向けられた笑顔は、照れていて、少しぎこちない。祐一郎のために、なんてことないような素振りをしてくれる圭介の瞳が、不安気に揺れているのを見て、目が離せなくなった。
『……僕も、圭介くんが好きです』
声に出してはいけない言葉が、口から零れ出そうになる。無自覚だった自分の気持ちを確信した瞬間、「好き」な気持ちが溢れていく。
――この人が好きだ……。
圭介と、触れたい、手を繋ぎたい、抱きしめ合いたい。体中に漲るこの気持ちは、祐一郎が初めて感じるものだ。こんな欲求は、異性相手でも同性相手でも、友情という境界線を超えてしまっている。
――これが、恋なんだ……。
じっと圭介の瞳を見つめる祐一郎の瞳を、圭介も見つめている。祐一郎の答えを待つ、少し不安気な瞳。
――いや、違う……。
祐一郎の答えじゃない。待っているのは祐子の答えだ。決して交わらない気持ち。圭介の好きは、祐一郎が圭介を想う好きとは違う世界にある。
――圭介くんが好きになったのは「祐子」なんだから……。
「…………っ」
自覚したとたん、つんと鼻の奥が痛くなり、目頭が熱くなる。ここで泣いてはいけない。祐一郎は必死に涙を流すまいと耐えた。
――断らなくては。
ここで祐一郎が祐子としてできることは、この告白を断ることだけだ。
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