第七章

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「化石と鉱物の展示をして、それを見ながらお茶ができる、化石鉱物カフェをやるんだ。でも日曜にウェイターができる人が少なくて」 ただのカフェではないため、石の説明ができる学生でないとだめらしい。日曜は、同好会の先輩の多くが研究室の展示発表に駆り出されてしまい、人手が足りないのだと言う。理学部の研究室は、E大祭での研究発表や研究室の開放に力を入れている。祐一郎も高校生の時に見学に行ったことがあり、研究室の雰囲気を見て、進路を決めたほどだ。 「日野なら鉱物の知識は充分だし、簡単な喫茶だから、コーヒー・紅茶、ジュース類と、クッキーとか、洋菓子を出すくらいで、難しくはないと思うんだ」 お願いします、と手を合わせる広瀬に、祐一郎は少し思案し口を開いた。 「…………わかった」 以前の祐一郎ならば、接客など絶対無理だと断っていただろう。しかし、圭介との別れをきっかけに、変わりたい、人と関っていきたいという気持ちが出てきたのだ。陰鬱で無気力に毎日を過ごした夏休みが終わり、このままではいけないと思ったこともある。 「ありがとう! 詳細はまた連絡する」 嬉しそうな様子の広瀬に、祐一郎も引き受けて良かった、という気持ちになった。
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