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「ああ、また君か。今日も届いてないよ」
「そうですか……。わかりました……」
「もう一ヶ月は経つだろう。難しいんじゃないかなあ……」
「そう……、ですね……」
職員から、少し呆れたような声音で諭され、祐一郎は今日もがっくりと肩を落とした。未だに、あのコンドライトは祐一郎の手元には戻ってきていない。今日も、授業終わりに文系キャンパス内の事務局に足を運んだが、いつも通りの返事をもらっただけだった。日参しているおかげで、すっかり顔を覚えられてしまっている。難しいんじゃないか、と職員が告げた言葉が、祐一郎の胸をぎゅっと締め付ける。
――諦めた方がいいのかな……。
この一ヶ月、自分でも何度も何度も考えたことだった。しかし今初めて他人から言われたことで、心のどこかでいつか見つかると思っていたことを自覚した。
――ずっと大事にしていくって、言ったのに……。
溢れてきた涙が、視界をぐにゃりと歪ませる。心の拠り所だった、大切なお守り。それを失った喪失感は大きく、真っ暗闇に取り残されたような心細さに人目も憚らずぽろぽろと涙が出てきてしまう。周囲に泣き顔を見られたくなくて、祐一郎は鼻を啜りながら、俯き気味にぼとぼと歩いた。
「日野……? なんで文キャンに……」
名前を呼ばれ、はっと顔を上げると、そこには圭介が立っていた。
「あ……」
「どうした!? どこか具合いでも悪いのか!?」
圭介に両肩を支えられ、思ったよりもふらふらと歩いていたことを自覚する。肩から、圭介の手の温もりが伝わってくる。身長差のある祐一郎の顔を覗き込もうと少し屈んだ圭介の顔が、思った以上に近くて、息を飲んだ。消しゴムを拾ってもらった時、感電したように離れて行った指が、力強く肩を支えてくれている。深く、視線が絡み合う。圭介のきれいなアーモンド形の瞳が、祐一郎の不調を探るようにじっと見つめていた。
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