第九章

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第九章

観測会に集まった学生は40名ほどだった。からりと晴れた日の夜。天体観測にはもってこいの、雲一つない夜空が広がっている。 寒空の下、ホットコーヒーやホットワインを飲みながらの観測会が始まった。天体望遠鏡の数には限りがあるため、何人かのグループに分けて観測していく。観測を待っているグループも、もう終わったグループも、星空の下での飲み会に終始盛り上がっていた。 その中に、圭介の姿もあった。同じグループの友人数人と楽しそうに話している。声を掛ければ届くくらい近くにいるが、声をかけることはできない。祐一郎の気持ちの全てを打ち明けようと決意をしてきたのに、土壇場になってこの場から逃げ出したくなる。 全員の観測と、小松教授の特別講義が終わると、観測会は自由解散となる。しかし、小松教授が顧問を勤める天文部が手伝いとして駆り出されている観測会は、そのまま忘年観測会と称して深夜まで続くらしい。自由参加のため、ここで退席しても問題はない。祐一郎も、普段であればすぐに帰っていただろう。しかし、今日こそは圭介に話しかける、と決意してきたのだ。しかし、楽しそうに友人たちと談笑している圭介に話しかけるチャンスは一向に訪れない。それでも、ちびちびと、ぬるくなったホットコーヒーを飲みつつタイミングを見計らっていると、近くに座っていた同じ学科の男子学生から話しかけらえた。 「なあ、これ日野だろ? E大祭で見たんだよ。めちゃくちゃかわいいよな」 そう言って、スマホ画面を見せられる。 「えっ……、この写真って……」 「ああ、なんか出回ってるぞ。E大祭で美少女メイド発見! って」 「うそ……」 「えー! 見せて見せて」 青褪める祐一郎をよそに、彼は近くに座っていた面々にスマホを回し始める。化石鉱物同好会の女子が撮ったと思われる、カメラを目線だがぎこちない笑顔の写真や、接客中の隠し撮りのような写真もあった。
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