山神の嫁

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山神の嫁

 今日で私は十四歳。山の神様の所へお嫁に行く。  そのために私は生きてきた。…生かされてきた。  流行り病で両親が一度に亡くなったのは私が三歳の時。  身寄りがなくなった私は村長の家に引き取られ、下働きとしてこき使われながら十四歳の誕生日が来るのを待ち侘びられた。  この辺りは、遠い昔から時々お山が火を噴いて、大変なことになる土地柄らしい。  だから十数年に一度、山の神様に村の娘をお嫁にやって、怒りを鎮めてもらっている。  つまり私は神様への生贄で。そのために十年以上村全体に飼われてきた。  真っ白い着物を着せられて、籠に乗せられ、山頂へと運ばれる。山の上には小さな祠がって、私はそこに閉じ込められるた。  中がどうなっているのかは知らない。祠に閉じ込められた娘は二度と外には出て来られないらしいから。  普通に考えたら中でそのまま飢え死にするんだと思う。あるいは祠の中に深い穴とかがあって、そこに落ちて死ぬのかも。  でも私は、祠に入れられた娘達がどうなったのかを知っている。だって教えてもらったから。  十歳になった時、自分が生贄として育てられていることを知った。でもそれは私にはどうでもいいことだった。ううん。むしろ救いだった。  十四まで死なせないように生かしておく。でも蝶よ花よと育てる必要はないし、むしろ身寄りもない子供を育ててやるのだから、恩返しとしてこき使うのは当たり前。  そんな暮らしだった。だから、十四歳になったら行き地獄のような毎日が終わると知ってありがたかった。  むしろ十四歳になるまで待たずに、今すぐにでも山の神様の所へ行かせてほしい。
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