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「待ちなさい! それを渡すわけには行かないの!」  医療器具を蹴り飛ばし、掛布団を弾き飛ばし、莉奈はマリアを追った。  莉奈の身体は完治し窓の外を見渡したが、飛び降りたはずのマリアの姿は闇に溶けたとしか思えなかった。  その肩を後ろから抱き寄せる一対の腕は、振るえていた。 「どうして……っ! 雄平! あんな取引……っ!」 「嫌って良い。殴って良い。(なじ)って良い……でも、お前には生きて欲しいんだ……」 「……バカ……っ!」  ふたりの永遠がそこに有った。  ふたりにとって、永遠の別れまでの僅かな別れだけでも永遠だが、その永遠が永ければ永いだけ良い。  未来まで、何が残るのかわからない。  遠い未来のことはわからない、だが、それでも、雄平にはある確信が有った。 「俺と莉奈の愛は永遠だ」  鏡写しの確信が莉奈にもあるという確かな絆を、倒れた医療器具が医師と看護師を呼ぶまでの数秒の間に確かめ合う。  本来の歴史では、莉奈は死ぬはずで、未来まで永遠は残れなかった。  だが、この世界では、雄平と莉奈の間に愛の形が残る。それは、確かに、未来に永遠を繋ぐのは確信を越えた確約だ。
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