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「……どういう、こと、これ……!?」
出発前と多少の違いは出る可能性は、有った。
過去が変われば未来も変わる。バタフライエフェクトと呼ばれ、蝶の羽ばたきが回り巡って台風になる。風が吹けば桶屋が儲かる理論。
それで過去の人間の生き死にから多少の変化はあるとは思われていたが、それは所詮些末なエネルギーであると計算されていた。
遥か彼方の過去ならば、現代に行くまでに時間そのものの修正力によって廃れる、そのはずだった。
だが。
「……どういうことなの、支配しているはずの星は……これだけ……っ!?」
出発前と出発後のデータを見比べたマリアは、思わず後退った。
億単位で人類が征服していたはずの外宇宙の惑星が、比べものにならないほど減っている。
【不老技術が必要か、この議論は永遠に続けなければなりません!
他の惑星を侵略することを前提とする人類の発展は、本当に必要でしょうか!】
テレビではマリアの知っている男とは違う顔が演説をしていた。
知らない顔ではあったが、見覚えのないわけではない。
政治家の名前は、ヨシハシ・エイユウ……明らかに、雄平と莉奈の子孫だった。
そして、自分の手持ちのウイルスについて調べると、ヨシハシ一族の提供・研究で大昔にワクチンが生み出され、なんの価値もないものになっていることも知った。
「……愛、地球を救いすぎでしょ……」
意味を失った雄平の髪の毛を見つつ、ぼそりとマリアは呟くだけだった。
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