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アイラッシュレイヴ~はじまりのあいら
ひときわ大きな放物線を描いて、白球がバックネット裏へ消えていった。わきあがる観客の声援に両手をあげて応えるのは、ロボット野球チーム『東京エレファント』の主砲、コジローだ。ゆっくりと塁をまわり、ホームベースをふんだ。
「おわった……」
なにもかもが今日で終わった。
応援するブルーオーシャンズの、クライマックスシリーズ出場をかけた最後の闘いだったというのに。
となりでほおづえをついてスナック菓子をつまんでいたミカちゃんが言った。
「しかたないよ。万年最下位だもん」
「今年はぜったい優勝だったのに!」
「毎年言ってんじゃん」
ミカちゃんはにべもなく言い放つと、ティッシュで指をふいた。
「それよりさ、就活、どうしてる?」
タブレットでは逆転満塁ホームランを打ったばかりのコジローが、鈍色の体にライトを浴び、ひときわピカピカと輝かせながらヒーローインタビューを受けている。
あたしは無言でメール画面に切り替え、ミカちゃんにさしだした。
藤崎あいら、高校3年生。
最後の望みと賭けていた会社から、不採用通知が届きました。
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