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翌日。リクルート担当の先生とを話しをするため、高校へ出向いた。あたしの通う高校は単位制になっていて、毎日通う通学コースと、オンライン授業中心のコースとがある。家族のいない、一人暮らしのあたしは、オンラインコースで学びながら、昼は定食屋、夜は居酒屋になる飲食店で働く日々をすごしている。
卒業に必要な最低ラインの単位は無事にとれ、あとはその日を待つばかりとなった。卒業後の進路さえ決まれば。
机をはさんで向かいあった先生はメガネのレンズをふき、かけると言った。
「いくら人手不足の警備業界ったって、こんなに受からないとはね」
「やっぱりなにも資格がないのがいけなかったのかな。柔道とか、剣道とか、ぜんぜんだし。でも資格不要、未経験者大歓迎、って、ありましたよね」
「まあ、即戦力になるか、っていったらならないよね。資格をもってて、なにかしらスポーツの経験のある人からとっていくよね」
先生は唇をとがらせ、まゆげをへの字にして笑った。
「大量採用、大量離職の業界だから、チャンスはあると思ったんだけどなあ。藤崎さん、進学の希望はないといっていたけど、本当に?」
進学を希望するなら、それはそれでまた相談にのるから。と先生は言い、卒業後の進路をどうするか、もう一度しっかり考えることでまとまった。
芝生の上に車座になり談笑している生徒たちのわきを通る。スプリンクラーがくるくるまわって、あちこちに小さな虹をつくっていた。門をでる。
きのうの夜、ミカちゃんと観たロボット野球の試合が忘れられない。ブルーオーシャンズの選手たちは、どうしているだろう。
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