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階段の踊り場で乱れた息を整える。遠ざかっていく声に、どうやらこっちには来ないようだと安堵した。近付いてくる足音はきっと。この人は、大丈夫だ。
「気付いてなかったよ。大丈夫」
私を見かけるなりそう言った三谷くんに、本当に助けてくれたんだと確信する。
「あの……ありがとう」
「ハンカチとか持ってないや。最後にかっこつかないな、俺」
そういえば泣いていたんだった。思い出したみたいに、またぽろっと涙が零れる。急に泣き出した私を見て三谷くんが慌てだす。
「ご、ごめん…!」
何で謝ってるんだろ。三谷くんは何も悪くないのに。あわあわとテンパる三谷くんを見ていたら何だか笑えてきた。小さく笑みを零した私に三谷くんが安心したように息を吐く。
「本当に好きだったの」
三谷くんに言っても仕方のないことを、私はぶつけてしまった。もう本人には吐き出せない想いで潰れてしまいそうだった。三谷くんの優しさにつけこんで、私はどんどん醜くなる。
「好きで、好きでずっと、私」
「うん、ずっと頑張ってたもんな」
「私の方が好きだったの、私の方が…!」
「うん、分かってるよ」
よく頑張ったな、えらいえらい。暖かい手が頭を撫でる。私から吐き出される汚い言葉達を三谷くんはずっと聞いてくれていた。否定もせずにただ、受け入れて何度も頷いてくれて。行き場のない恋心が救われていくようだった。
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