3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめん、色々と」
「いいよ。宮村がすっきりしたならよかった」
心に巣食っていたどろどろの感情を三谷くんが消化してくれたような気がした。うん、本当にすっきりしてる。さっきまであんなにしんどかったのが不思議なくらい。
「嘘でも、私が頑張ったこと分かってるよって言ってもらえてすっごく嬉しかった」
ありがとう。そう呟いた私を神妙な顔で三谷くんが見ていた。どうしたんだろう。
「嘘じゃないよ」
「え…?」
よし、と小さく気合を入れた三谷くんが私を見つめた。その真剣な瞳に目を奪われてしまう。
「宮村が須田のこと好きで頑張ってんの、ずっと見てたから」
「見てた、って…」
「今こんなこと言うの、つけこんでるみたいで本当最低って思うけど」
一心に向かってくるその声が私の鼓動を速くする。
「俺、宮村のことずっと好きだったんだ。宮村が須田を好きって知っても諦めらんないくらい」
予想外の展開にまた頭が真っ白になる。全然何も知らなかった。何も気付いていなかった。こんなにも強く想われていたなんて。ああそっか、私もきっと気付かれていなかったのか。
「だから…俺と付き合ってください」
三谷くんが頭を下げる。すごいなあ。本当に。私には出来なかったことだ。弱虫で汚い私には。
「私には…三谷くんは勿体無いよ」
「俺とは付き合えない?まだ須田のこと好き?」
「慰めてくれて本当に嬉しかったの。三谷くんの優しさを利用したくない」
これ以上甘えられない。縋りたい最低な自分を押し殺して三谷くんを見れば、ぐいっと手を引かれて三谷くんの腕の中に閉じ込められた。勢いはあるのに何処かおそるおそるで、何処までも優しい人だなと呆れてしまう。
「利用していいよ。須田のこと好きなままでも。俺、須田のこと見てるきらきらしたお前のこと…好きになったから」
「三谷く…」
「俺も宮村みたいに頑張るから。そんでいつか、俺のこと好きになってよ」
私の心を溶かした声が、甘く沁み込んでいく。
卑怯な敗者だった私の手を引いて、彼は勝者になるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!