April showers bring May flowers

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「俺も受験失敗組。当日お腹壊してさー、試験どころじゃなかったわ。1か月前の俺に言いたいよね、『その牡蠣は食べるな、罠だ!』って」 「……ふ、なにそれ」 「すっげー泣いたし、昨日も入学式行きたくなくて友達とオールしてたし。ぶっちゃけそのせいで遅刻したんだけどね」 「……」  さっきまで『冷たい』、『痛い』と思っていた雨が、なぜだか心地よく感じてしまう。私の背中と、彼の背中を濡らす春の雨。『頑張れ』って、後押ししているように思える。  自然と私の口から言葉が降っていく。 「……私、志望校に合格するために、夜も寝ないで頑張ってた。成績も上位をキープしてたし、素行にも気をつけてた」 「うん」 「……でも何にも意味なかった。無駄だった。私、今まで何のために頑張ってたんだろうって、空しくなって……」 「うん」 「おまけにこの雨だよ。入学式っていう晴れの日に雨。桜も散っちゃってなんだか汚いし。もうほんと、私ってどこの学校にも歓迎されてないなー……って気分になって」 「……うん」 「どうしても入学式に出席する勇気が、でなかった」  私の言葉が雨だとしたら、彼はそれを受け止めてくれる水たまりのようだった。否定も肯定もしない小さな相づちが心地よくて、私はここにいてもいいんだって思わせてくれる。
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