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雨脚が弱まってきた。私と彼の間にあるビニール傘からはじかれた雨粒が、きらきら光った。太陽が顔を出す準備を始めたのかもしれない。
「4月の雨は冷たいし、せっかく咲かせた桜を散らすけどさー。その雨がなきゃ、5月の花は咲かないし、新緑も美しくなれない。太陽だけじゃだめなんだ」
「……」
「君もさ、4月に良い高校に行くためにいままでいっぱい頑張ってきたんだろうけど、そんな努力が、たった1回の失敗で台無しになると思う?」
「……」
「まだわからないけどさ。失敗も君にとって必要なことだったんだよ。みんなより雨を1回分多く浴びてるんだ。きっとめちゃくちゃきれいな花が咲くに違いない」
止まっていたはずの涙が、再び目から零れる。それはとても温かくて、冷え切った頬に柔らかく滑り降りた。
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