ノンブルゲーム

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 男性が姉弟にそう告げると、少年は「くそー、負けたー!」と言ってくやしがった。しかしそのくやしがり方は、どこか楽しんでいるふうでもあった。今回はノンブルの振られ始めの番号が未知であったぶん、運の要素が大きく作用した。確かに少年は負けたかもしれないが、その戦いぶりは少女にまったく劣っていない。 「お姉さんの勝ちだね」  男性は一息ついて文庫本とペンをテーブルに置き、そろそろいい加減ごまプリンを食べなきゃなとそれに手を伸ばしたところで、早くも気を取り直した少年の言葉を聞き、ぴたりと手を止める。 「ルールは分かった? じゃあおじさん、そのごまプリンを賭けて、ぼくたちと勝負しよう!」          § 「それは災難だったわね。……で、その遊びに使った本を、あなたが間違って持って帰ってきてしまったのね?」  温かみのあるオレンジ色の照明に包まれたダイニング。テーブルの上に用意された一汁三菜に、主食となる炊き込みご飯を盛りつけた茶碗が加わる。女性が電気ケトルから急須へ湯を注ぎ、時間を置く代わりに軽く急須を揺らして、早く茶葉の成分が抽出されるようまじないをかける。  男性は水切りラックから二人分の湯飲みを手に取り、テーブルへと置いた。  そして、苦笑気味に言う。 「いや、私が二勝したから、謹んで頂戴したのさ」
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