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side 蒼牙 通された部屋は完全個室で、大きな窓からは美しい日本庭園が広がっていた。 「豪勢すぎて緊張するな。」 向かいに座った悠さんはそう言うが、和室の中座っている姿はとても落ち着いていた。 さっきの抹茶の時にも思ったけど、凛とした悠さんには和風のものがよく似合っている。 …きっと浴衣も似合うんだろうな。 旅館の浴衣姿を想像してしまい、その色っぽさに顔がにやけてしまう。 今俺の頭の中を悠さんが見たらきっとドン引きされるに違いない。 その位、今日の俺は浮かれている自覚があった。 暫くして用意された懐石は旬の野菜と地元の食材がふんだんに使われている。 静かに男性スタッフが運んでくるその立ち居振舞いに、つい目がいく。 悠さんもその事に気が付いたのか「勉強になるか?」と聞いてきた。 「そうですね。せっかくのお休みなのに…」 「良い経験じゃないか。街のアルバイトじゃなくて老舗旅館のプロの動きなんか、いつでも見られるもんじゃなし。しっかり勉強しろよ。」 そう言ってニッと笑うと料理を口に運ぶ。 俺が一目惚れしたその笑い方。 思わぬタイミングで見たことで心がざわついた。 「…悠さん」 「ん?」 モグモグと口を動かしながら視線を向けてくれる貴方に笑い掛ける。 「あんまり煽らないで下さいね。今日はリミッターが外れてるんで、どうなっても知りませんよ?」 「…ゴホッ、ゴホッ…な、俺がいつ煽った!」 噎せる悠さんに「大丈夫ですか?」とおしぼりを渡した。 次々と運ばれる料理を嬉しそうに全て綺麗に食べる姿にも煽られていると知ったら、貴方は呆れるのだろうな…。 とりあえずこの食事が終わったらキスしよう。 そう密かに心に決め食事を再開したー。 「美味しかったですね。」 旅館を出たところで声を掛け振り返る。 「…そうだな。」 デザートを食べ終えてから、決めていた通り悠さんの側に移動したくさん口付けた。 個室とはいえ隣からは他の客の笑い声が聞こえ、恥ずかしがる悠さんを腕の中に閉じ込めて唇を奪い続けた。 ぶっちゃけあの場で押し倒したかったが、そこは理性を総動員させて我慢した。 「怒ってますか?」 口数が少なくなった悠さんに不安になり問う。 「…怒ってない。」 そう言って俺の肩に額を押し付けてくる姿に、悠さんもまんざらではなかったのだと安心したー。
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