2 豹変

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side 蒼牙 無意識のうちに悠さんの手を掴み指を口にしていた。 あの目眩がしそうな香りが口に広がり、その甘さに自分の中でスイッチが入るのが分かった。 『手に入れたい』 『もっと触れたい』 『この人の全てを自分のものにしたい』 そんな欲望が押し寄せる。 「指じゃないとこにもキスしたい。」 甘い香りに誘われる蝶のように、 触れそうなほどの近さで囁く。 「秋山くん、からかうな。」 怒った口調に関わらず顔は赤いままで、その唇に噛み付きたくなる。 でも今はまだその時じゃない。 ここで嫌われて逃がすわけにはいかない。 「早く呼ばないとキスするよ?俺はそれでもいいけど。」 …だから、 今はこれで我慢してあげるから、 名前を呼んで。 「そ、蒼牙!」 聞こえた声にピタリと体が止まる。 自分の名前なのに、貴方に呼ばれるとまるで違うもののようで。 渇いた土に水が染みるように俺の心を満たしていく。 「…うん。いいね。」 …あぁ、きっと今すごく変な顔をしているに違いない。 ハッとした。 俺、今…悠さんに何をした? 「すみません!」 もうクセになったかのように謝罪が口をつく。 恐る恐る顔を上げると、そこには不思議なものを見るような表情の悠さんがいて。 「…秋山くん?」 確認するように名前を呼ばれた。
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