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昼食が終わり温泉街をブラついた。 それでも早く悠さんと寛ぎたくて、チェックインの3時丁度に旅館に入った。 仲居さんの案内のもと通された部屋は室内露天が付いた立派な部屋だった。 「悠さん…ここ、」 想像していたよりもランクの高い部屋に悠さんを振り返った。 『旅館は俺が選ぶから、祝いをさせてくれ。』 計画を立てる際に悠さんが言った言葉を思い出す。 「うん、綺麗な部屋だな。お、露天も立派!」 室内を見て回る悠さんを追いかけて一緒に回る。 「ホント、こんな良い部屋…高いでしょう?」 何だか申し訳なくなって小さく呟くと、クスッと笑う声が聞こえた。 「そんなに高くないよ。それに、あんまり俺の給料馬鹿にするなよ。伊達に大学出てないから。」 そう言って座椅子に座り、仲居さんが淹れてくれたお茶を飲み始める。 「素直に喜んでくれたらそれが一番嬉しい。」 俺を見る目が優しく細められた。 「…はい、ありがとうございます。」 嬉しくて、悠さんの体を横から抱き締めた。 「ん、それと…」 悠さんは俺の腕から逃れると、部屋の隅に置いていた旅行鞄から何かを取り出した。 「…蒼牙、誕生日おめでとう。」 言葉と共に突き出された小さな箱。 「あ…ありがとうございます。」 ビックリしてしまい受け取るのが一瞬遅くなってしまった。 旅館だけでも充分なのに、まさかプレゼントまで準備してくれていたなんて… 嬉しすぎて目の前の悠さんを強く抱き締めた。 「本当にありがとうございます。」 「…ンッ…」 瞳を見つめお礼を言うとそのまま優しく口付けた。 チュッ、チュッと吸い付くと、悠さんの唇が僅かに開かれる。 直ぐ様舌を差し込み深い口付けに変えた。 チュクッ、チュッ、ピチャ… 舌が触れ合う音と背中に回された手の温もりに、身体が熱くなっていく。 「ンッ…ハァ…蒼牙、開けないのか…?」 押し倒そうとしたその時、悠さんが囁き我に返った。 「…すみません。あまりにも嬉しくてガッツイちゃいました。」 ゆっくりと身体を離し、プレゼントを手に持つ。 リボンをほどき丁寧に箱を開けていった。 「…ッ…凄く、嬉しいです。」 中を確認し、それを取り出しながら悠さんを見つめた。 俺の手の中には蒼い文字盤の趣味の良い腕時計が光っていたー。
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