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27 引っ越し祝いの副産物
side 悠
蒼牙との同棲が始まり暫くたったころ、社員食堂で木内が声を掛けてきた。
「篠崎、彼女との暮らしはどうだ?」
あまりにも突然の質問に飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになる。
「ッ、何だよ、急に。」
口を拭いながら木内を見ると、ニヤニヤしながら自分の首筋を指差した。
・・・あ、嫌な予感がする。
「相変わらず積極的な彼女だな。うっすらだけど付いてんぞ、キスマーク。」
そう指摘されて思わず首筋を手で押さえた。
今朝、玄関で引き留められその場で『行ってらっしゃい』とキスをされた。
次いで『クールビズでネクタイを外すのは良いですけど、あんまりボタンを外したらダメですよ。』と訳のわからないことを言って首筋を軽く吸われもしたが・・・あの時か!
「いいねぇ、積極的な恋人なんて、最高じゃないか。・・・ということで、はい。」
首を押さえたまま黙っていると木内が紙袋を渡してきた。
「なんだ?これ。」
ガサガサと渡された袋を受け取りながら訊ねる。
「うん、引っ越し祝いしてなかっただろ。だから、それやる。」
「え、・・・ありがとう。」
まさか祝いをしてくれるとは思わず、礼を言って紙袋を見た。
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