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Side 蒼牙
困った。
どうしよう。
飲み物が欲しくて寄ったコンビニで、見知らぬ女の子達に声を掛けられた。何度も断ってるのにぜんぜん諦めてくれない。
あ、この娘美味しそうな匂いがする。
でも欲しいとは思わないな…。
そんなことより、どうやって逃げよう。
心底困っていると、後ろから肩を叩かれた。
「お待たせ、佐山。」
びっくりして振り向くと、そこには俺よりも少し目線の低い知らない男の人がいて、よく分からないけど助けてくれるんだと理解した。
あんなに断っても諦めてくれなかったのに、彼のおかげでその場から離れることができた。
その際に予想外なことを言われたけど…それは気にしないことにする。
それよりも、
「あ、あの。」
「ん~?」
俺の腕を掴んだまま歩き続ける彼に声を掛ける。間延びした返事をするこの人に掴まれた腕がなんだか熱い。
「あの、腕、」
「ん?あぁ、悪い。」
そう言って手を離した彼は、立ち止まると俺に向き直り二ッと笑う。
その瞬間、目眩がしそうな程の香りに襲われた。
ドクン
心臓が音をたてる。
…なに、これ。
ドクン、ドクン
ひとつ音をたてるごとに本能が呼び起こされる…そんな感じ
胸に手を当て息を吸い込む。
とにかく落ち着け。
『欲しい』
かつてない強い欲求に俺は戸惑っていた。
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