1 出会い

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ドクン、ドクン… 心臓、うるさい。 ほら、何か言わないと。 「助けてくれてありがとうございました。」 とっさに出たありきたりなお礼。 「いや、こっちこそ変な断りかたして、悪かったな。」 「いえ、助かりました。ああいう時、どうしたら良いのか分からなくて。そうか、ああ言えば良いのか…」 何とか彼と繋がりをもちたい。 「いやいや、違うと思うけど」 少し困ったように笑う彼の笑顔に、俺もつられて笑う。 …欲しいな… もっと話がしたい。声を聞きたい。 …彼の香りを抱きしめたい。 自分の気持ちに戸惑いながら、もう一度お礼を言う。 「そんなにお礼言われることじゃないと思うけど。ま、いいや。じゃあな、佐山。」 そう言って彼はまた歩き出そうとする。 ダメだ! 咄嗟に彼の手を掴む。 「俺、佐山じゃありません!」 思いがけず大きな声が出て自分でも驚く。 でも、そんな事言ってられない。 まだ…まだ話がしたい。 「え、そうだろうな…」 彼も驚いたのか、そう言うと黙ってしまった。 そうだ、名前だ。 「俺、秋山って言います。秋山蒼牙(あきやま そうが)…あなたは?」 掴んだ手を握り直して、握手しながら自己紹介する。驚いたような表情をしていた彼は、それでも律儀に返してくれた。 「…篠崎悠(しのざき はるか)」 篠崎悠…彼の名前を心の中で繰り返す。 「篠崎悠」 と思ってたのに声に出てしまったらしく 「いきなり呼び捨てかよ。」 彼の声にハッとする。 「すみません!」 「いや別に良いけど。それより、手離していい?」 「すみません!」 何度も謝る俺を見て悠さんは声を出して笑った。 やっぱり、欲しいな。
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