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side 悠
秋山蒼牙と名乗った彼は、さんざん謝ったあとで「お礼に食事でも奢ります。」と言ってきた。
おそらく俺より年下のヤツに奢ってもらうのも如何なものか。
だいたいそんなにお礼を言われるようなことをした訳ではない。
「いや、もう買ってるし。ビールも買ったからな。帰って食べるよ。ありがとうな。」
コンビニの袋を下げて見せると、何故かションボリとした様子になる。
何か犬みたいだな。
内心そんなことを考えながら「じゃあな、秋山くん。」と別れを告げる。
マジ、腹減った。
早く帰ってビールが飲みたい。
そんな事を考えていると「それじゃあ…」と声がする。
何だ?
まだ何かあるのか?
「じゃあ、明日。明日、お礼させてください。」
「え、いやいいよ。悪いし。」
「食事じゃなくて、コーヒーで。」
一生懸命そう告げる秋山くんは、本当に犬みたいだ。
意外とカワイイな。
「いいよ。じゃあ明日な。」
「…!はい!」
これ以上断るのも悪い気がして了解すると満面の笑み。
パタパタと揺れるシッポが見える…気がする。
明日の待ち合わせを確認して今度こそ別れた。
秋山蒼牙か。
犬みたいな様子を思い出し、気付くと笑っていた。
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