1 出会い

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side 蒼牙 昨日悠さんと約束してから落ち着かない。 俺には人には言えない秘密がある。 それは母親が吸血鬼だということ。 そして人間の父親に似ず 俺も吸血鬼として生を受けた。 小説や映画のように、太陽やニンニクが苦手だとか変身できるとかではない。 むしろ好きだ。 日常生活で人間と変わることはない。 ただ人より力は強いし外見も吸血鬼の特徴らしく悪くない…らしい。 母親曰く、見た目が良くないと人間を魅了できないから、だから吸血鬼は美しいのだ…そう教えられた。 確かに人間の血を吸うならば、自分に好意を抱いているほど都合は良いだろう。 ただ俺は父親の人間の血も色濃くついだらしく、今まで人の血を吸いたいと思ったことはなかった。 正直美味しそうだと思ったことはある。 でもそれだけだ。欲しいなんて思ったことはない。 『愛しい人の血は、どんなものよりも自分を虜にするわ。あなたにもいつか分かる日がくるわ。』 母親が昔言った言葉を思い出す。 あの時、血を吸われて眠った父を抱いていた母は美しかった。 その時はよく分からなかった。 きっと分からないだろうと思っていた。 …昨日までは。 今まで恋人だっていたし、彼女達の血も美味しそうだった。 でも欲しいなんて思わなかった。 初めてなんだ。 こんな気持ちは。 あの目眩がしそうな香り。 自分が今まで欲したことのない人間の血。 彼と何とか繋がっていたくて必死になった。 彼と約束を交わした後、その場に蹲ってスマホを握りしめた。 手が震えるなんて…初めてだった。 コンビニで振り向いて貴方を見たあの瞬間。 俺は貴方に恋をしました。
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