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「最高だった」  と、目の前のホットドッグにかぶりつきながら俺は言った。 「いいや、最低だね」  と、渋い顔でベーグルサンドを口に運びながらFartは言う。  『Cinema Anthony』で『COHEN&TATE』を観終わったあとのことだった。俺たちは一度映画館を出、ブリーカー・ストリート沿いにあるブランチカフェで軽めの昼食を取っていた。  本当によく食うやつだって?  いいんだよ、俺は育ち盛りなんだから。  それに上映中に食べたフレンチフライは、今や最高に面白い映画を観たあとの興奮で完全に消化されてしまっている。俺は映画を観たあとは大抵こうだが、それにしてもこんなに楽しめた映画は久々だった。 「あんた観てなかったのかよ、あのコーエンが血塗れになりながらテイトを撃つシーン。あそこは最高にクールだったぜ。それにラストのトラヴィスとのやりとりも」 「あれがクールだと? 冗談じゃない。そもそもあのコーエンとかいう男は、30年もあの仕事をやってるくせに抜かりすぎだ。殺し屋なら、普通は自分が撃った相手が確かに死んだかどうか確認するだろう。やつは二度もそれを怠ったんだ。まったくひどい脚本だった」     
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