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「けど最初の父親はともかく、あの状況でテイトが生きてるとは誰も思わないだろ。だってコーエンは完璧にやつの心臓を撃ってた」
「ふん。俺だったら心臓じゃなく頭を撃ったね。あの距離ならその方がより確実だった。そもそもあのテイトとかいう若造が気に入らん。殺し屋なら警察に追われるのは当然だ。それをいちいち蹴っ飛ばされた鶏みたいに騒ぎやがって」
「そんなに言うなら、あんたが自分で理想の殺し屋を書いてみろよ。売れれば映画化されるかもしれないし、もしそうなったら特別に観に行ってやってもいいぜ」
まあ、本当にそんな売れ線があんたに書けるならな。そんな皮肉を朝食のピーナッツバターみたいにたっぷりと塗りつけて、俺は口の端で嗤ってやった。
Fartはそれが物書きとしてのプライドなのか、はたまた歳を重ねるごとに偏屈になっていく人間の性ゆえか、映画を観終わったあとは必ずこうしてシラミを探すようなことを言う。
だがそこまで言うならあんたの小説を見せてみろと迫っても、のらりくらりと躱すばかりで一向に尻尾を見せなかった。
まったく、この卑怯者のロクデナシめ。他人の作品はいくらでも批判するが、自分の作品は誰にも批判されたくないって?
それともやっぱり〝売れっ子小説家〟なんて肩書きは嘘なのか?
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