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どちらにせよとんだチキン野郎だ。違うなら正々堂々と――
「殺し屋が主人公の話なら、もう書いてる」
――白状しろ。
そう俺が心の中で言い終える前に、Fartはそう言ってニヤリとした。
その笑みを見て俺は確信する。
なんてこった。まさかこいつは俺を挑発してやがったのか? 皮肉を皮肉で迎撃するために。
だとしたらなんて大人げのないやつなんだ!
「へえ、そうかよ。で、それ、いつ映画化するの?」
だがここで青筋を立てたりしたらこのジジイの思うツボだ。俺は必死でそう言い聞かせ、こめかみがひくつきそうになるのをこらえながら尋ねた。
対するFartは至って余裕の表情だ。それどころか俺を策にハメたことで満足したのか、微笑みながら優雅にエスプレッソなんぞ啜ってやがる。
God damn it。
死ぬほど憎たらしい。
「映画化はしない。たとえそんな話が来ても、俺は断る気でいるからな。あの話には映画にして映えるような華がない。礼拝で聞く説教より退屈だったと観客に叩かれるのがオチさ」
「主演がトム・クルーズで監督がトニー・スコットでも?」
「ああ、無理だね」
「そりゃ、原作がよっぽどの駄作ってことだ」
「俺はリアリストなんだ」
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