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正面にはカメラを構えた赤鼻のピエロ。――くそっ、撮られた!
その事実に気づいた俺はすかさず抗議しようとしたが、まるでマスクの下で口を開いた瞬間を見計らったかのように、Fartが俺の頭へ右腕を乗せてくる。重い!
「もう1枚頼むよ」
マスクごと押さえつけられた俺がその腕をどかそうと奮闘している間に、再びカシャリ。次に覗き穴の向こうに見えたのは、俺を見下ろして満足げに笑うFartのしたり顔だった。
腹が立った俺はありったけのスラングでFartを罵倒してやったが、やつはそんなものどこ吹く風だ。むしろ聞き慣れたBGMのようにそれを聞き流すと、もう1枚の5ドル札と引き替えにピエロから2枚の写真を受け取っている。
「ほら、こっちがお前のだ、クリーチャー」
受け取ったばかりのポラロイド写真は真っ黒で、何が写っているのかサッパリ分からない。しかし時間が経つと切り取られた時間が浮かび出し、そこには父親に押し潰された息子の姿があった。
ハッキリ言って、こんなものもらったところで俺はちっとも嬉しくない。
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