3.

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「どうかな。映画の観すぎなんじゃない?」 「なに、お前もすぐに分かるさ」  Fartは低く笑いながらそう言って、ステージの方へ足を向けた。  やっぱり俺は未来の大統領――になるかもしれない男――の演説なんてまったく興味がなかったけれど、仕方がない。皮肉屋の愛国者のために今日は特別に付き合ってやる。これで1年前に食わされたステーキの件はチャラだ。  俺とFartはステージ前に集まった群衆の中に加わり、そのままハートが現れるのを待った。  周りは仮装したニューヨーカーだらけ。未来の大統領の応援にカボチャ頭や血を垂らした吸血鬼が集まっている光景は何ともシュールだ。むしろまったく仮装していないFartが異様に見える。  俺はと言えば、この状況でFartと一緒にすましているのも何だったので、途中から再びフランケンを被って場の空気に溶け込んだ。  そうこうしている間にも支援者は更に続々と集まってくる。さっきまで群がる聴衆の最後列にいたはずの俺たちは、気づけばサラダボールの真ん中あたりに押し込まれる形になっていた。Oh,Jesus……帰りはえらいことになるぞ、こりゃ。     
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