3.

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 そのときFartが、隣で何か意味深なことを言った。……〝耳を塞いでおけ〟だって?  おいおい。それじゃあ何のためにここに来たのか分からないじゃないか。最初に演説を聞こうと言い出したのはあんただろ?  そう言ってやろうと俺が顔を上げた先で、Fartはまっすぐにステージの上のハートを見つめている。 「さて、明日はハロウィンですが――」  と、その視線の先でハートがスピーチ台に身を乗り出した、そのときだった。  視界が暗転――ならぬ明転。  シャレにならない強烈なフラッシュ。  ほんの一瞬、世界から音が消え――  直後に轟き渡ったのは、体を粉々にするような爆音だった。  空を割るような悲鳴が上がる。マスクの内側で見開かれた俺の目に、炎上するステージが見えた。  会場は大パニック。1000を超える来場者が恐慌を来して思い思いに逃げ始める。  その大混乱の間に、見えた。  ステージの前で血塗れになって倒れている人。  燃え上がり、悲鳴を上げて芝生の上を転げ回っている人。  その火を消そうと必死の形相で駆け寄っていく人。  置き去りにされて泣き叫んでいる子供。  慌ててステージの上へ駆け上がっていく関係者。  木っ端微塵になったスピーチ台。  そのスピーチ台の傍に落ちた、誰かの左腕。 「て、テロだ!!」     
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