3.

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 逃げゆく群衆の中で誰かが叫んだ。  そんなの言われなくても見りゃ分かるよ、dumb-ass (クソッタレ)。  問題はこのテロを起こしたのがどこのどいつかってことだ。  すべての音が遠く、今まで経験したこともないような耳鳴りが容赦なく鳴り響く中。  俺は隣に立つFartを、茫然と仰ぎ見た。  Fartはまだハートのいたステージを見つめている。  それからゆっくりと俺の方を見て、何か言った。  耳鳴りがひどくて何も聞こえない。  だけど口の動きだけで何となく分かる。 「だから」 「耳を塞げと」 「言ったろう?」  ドッと、心臓を蹴飛ばされたような衝撃が走った。  次に気がついたとき、俺は叫び声を上げて逃げ出していた。  恐慌状態に陥った群衆に紛れて逃げる。逃げる。逃げる。  俺はとんでもない男と知り合ってしまった。  あのテロの犯人が誰かなんて、もう考える必要もなかった。  あいつは殺し屋だ。  あいつがハートを殺した。  だけどどうして?  何のために?  あのオッサンは愛国者に鞍替えしたんじゃなかったのかよ?  嘘だった?  これまで俺の前で見せていた顔は、並べられた言葉は、全部、全部、全部――  ユダに裏切られたキリストは、こんな気持ちだったんだろうか?     
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